最終更新日:2026年10月6日

「永久歯が乳歯の横から生えてきた」「乳歯が抜けていないのに、後ろから新しい歯が出てきた」――お子さまの仕上げみがきの最中に気づいて、驚かれる保護者の方は少なくありません。

このような状態は歯科では「二枚歯(にまいば)」と呼ばれることがあり、6〜8歳ごろの下の前歯でとくによく見られます。この記事では、永久歯が乳歯の横から生えてくる原因、様子を見てよいケースと受診したほうがよいケースの見分け方、歯科医院での対応について、口腔外科を専門とする歯科医師の監修のもとで解説します。

この記事の結論

永久歯が乳歯の横(内側・外側)から生えてくるのは、決して珍しいことではありません。乳歯がグラグラしていれば、自然に抜けて永久歯が正しい位置へ動いていくことも多くあります。一方で、乳歯がほとんど揺れていない、永久歯がすでに大きく出てきている、1〜2か月たっても変化がないといった場合は、乳歯の抜歯が必要になることがあります。迷ったら早めに歯科医院でレントゲンを撮って確認するのが安心です。

永久歯が乳歯の横から生えてくる「二枚歯」とは

本来、永久歯は乳歯の根を少しずつ溶かしながら真下(上の歯なら真上)から押し上げるように生えてきます。乳歯の根が溶けるとグラグラになって抜け、その場所に永久歯が並ぶ、というのが典型的な生え変わりです。

ところが、乳歯の根がうまく溶けずに残ったまま永久歯が出てくると、乳歯の内側や外側に永久歯が顔を出し、歯が二列に並んだように見えます。これが一般に「二枚歯」と呼ばれる状態です。海外ではサメの歯が何列にも並ぶ様子にたとえて「シャークティース」と呼ばれることもあります。また、本来の位置からずれて歯が生えてくることを、歯科の専門用語では「異所萌出(いしょほうしゅつ)」といいます。

特に多いのが、6〜8歳ごろに起こる下の前歯の生え変わりです。下の前歯の永久歯は、もともと乳歯よりも舌側(内側)でつくられるため、乳歯が抜ける前に内側から出てきやすいのです。保護者の方が「横から」「後ろから」生えてきたと感じるのは、多くがこのケースです。

生えてくる場所別のパターン

二枚歯や異所萌出は、歯の種類によって起こりやすい年齢や生える方向に傾向があります。お子さまの歯がどれに当てはまるか、目安としてご覧ください。

部位 起こりやすい時期の目安 生えてくる方向・特徴
下の前歯(中切歯・側切歯) 6〜8歳ごろ 乳歯の内側(舌側)から出てくる。二枚歯のなかで最も多いパターン
上の前歯(中切歯・側切歯) 7〜9歳ごろ 乳歯の内側(上あご側)から出てくることがある。下の歯より内側に入り込むと、噛み合わせが逆になる(反対咬合)おそれがある
上の犬歯(糸切り歯) 10〜12歳ごろ スペースが足りないと外側(唇側)に飛び出しやすく、いわゆる「八重歯」の原因になる
6歳臼歯(第一大臼歯) 6歳前後 手前の乳歯(第二乳臼歯)の根に引っかかり、斜めに生えて止まってしまうことがある。外から見えにくく、レントゲンで見つかることが多い

※生え変わりの時期には個人差が大きく、上記はあくまで一般的な目安です。

永久歯が横から生えてくる主な原因

原因はひとつではなく、いくつかの要因が重なっていることも多いです。代表的なものを挙げます。

乳歯の根がうまく溶けていない

永久歯の生える方向と乳歯の位置が少しずれていると、乳歯の根が均等に溶けず、乳歯がしっかり残ったままになります。その結果、永久歯は乳歯を押し出せずに横から出てくることになります。

あごのスペースが足りない

永久歯は乳歯よりもひと回り大きいため、あごの幅に対して歯が大きいと、並ぶ場所が足りなくなります。行き場を失った永久歯が、空いている内側や外側へ逃げるように生えてくるケースです。

永久歯の向きや位置のずれ

あごの骨の中で育っている永久歯の芽(歯胚)の向きが、もともと少し傾いていることがあります。この場合も乳歯の真下からではなく、斜めにずれた位置から生えてきます。

乳歯のむし歯・ケガの影響

乳歯の深いむし歯や、転んで歯をぶつけたことなどがきっかけで、乳歯の根の溶け方や永久歯の生える方向に影響が出ることもあります。

様子を見てよいケース・受診したほうがよいケース

永久歯が横から生えてきても、すぐに抜歯が必要とは限りません。ただし、自己判断で長く放置してしまうと歯並びに影響することもあるため、次のポイントを目安にしてください。

しばらく様子を見てもよいことが多いケース

  • 乳歯がはっきりグラグラしている
  • 永久歯はまだ先端が少し見えている程度
  • 痛みや歯ぐきの腫れがなく、食事もふつうにできている

下の前歯の場合、乳歯が自然に抜けると、舌に押される力で永久歯が少しずつ前方の正しい位置へ移動していくことがよくあります。

早めに歯科医院を受診したほうがよいケース

  • 乳歯がほとんど揺れていない
  • 永久歯がすでに半分以上出てきている
  • 目安として1〜2か月ほど様子を見ても、乳歯が抜けそうにない
  • 乳歯や歯ぐきに痛み・腫れ・出血がある
  • 上の前歯が内側から生え、下の歯より内側で噛んでいる
  • 歯みがきがしにくく、歯の間に汚れがたまりやすい

「様子を見ていいのか判断がつかない」というときも、一度診察を受けておくと安心です。レントゲンで乳歯の根の状態や永久歯の位置を確認すれば、抜歯が必要かどうかをはっきりさせることができます。

そのままにしておくとどうなる?

乳歯が抜けないまま永久歯が伸び続けると、永久歯がずれた位置のまま定着しやすくなります。主に次のような影響が考えられます。

歯並びが乱れやすくなる

本来の位置に移動できないまま永久歯が生えそろうと、歯が重なり合う「叢生(そうせい)」やガタガタの歯並びにつながることがあります。

噛み合わせに影響する

とくに上の前歯が内側から生えた場合、下の前歯より内側で噛む「反対咬合(受け口)」の状態になると、自然には治りにくくなります。早い段階での対応が大切です。

むし歯・歯肉炎のリスクが上がる

歯が二重に並んでいる部分は歯ブラシが届きにくく、汚れが残りがちです。生えたばかりの永久歯はまだやわらかく、むし歯になりやすい時期でもあるため注意が必要です。

歯科医院での診察と治療の流れ

二枚歯で受診した場合の一般的な流れをご紹介します。実際の対応はお子さまの状態によって異なります。

  1. お口の中の確認とお話乳歯の揺れ具合、永久歯の出ている量、噛み合わせ、歯ぐきの状態などを確認します。気になり始めた時期や、痛みの有無などもうかがいます。
  2. レントゲン検査乳歯の根がどのくらい溶けているか、永久歯がどの向きで生えてきているか、ほかの永久歯の育ち具合はどうかを確認します。
  3. 治療方針のご説明経過観察でよいのか、乳歯を抜いたほうがよいのかを、理由とあわせてご説明します。
  4. 必要に応じて乳歯の抜歯麻酔をしてから乳歯を抜きます。根が溶けかけている乳歯であれば、処置は短時間で終わることが多いです。
  5. 経過観察抜歯後、永久歯が正しい位置へ移動していくかを定期的に確認します。スペースが足りない場合などは、矯正治療についてもご相談に応じます。

乳歯を抜いたあと、永久歯が数か月かけて自然に正しい位置へ並んでいくことは少なくありません。ただし、あごのスペースが不足している場合には、永久歯が自然には並びきらないこともあります。その場合は成長のタイミングに合わせた矯正治療を検討します。

ご家庭でできること・避けたいこと

ご家庭でできること

二枚歯になっている部分は、歯と歯のすき間や乳歯と永久歯の間に汚れがたまりやすくなります。仕上げみがきでは、歯ブラシを縦に向けて1本ずつ毛先を当てるようにすると、内側に生えた永久歯の周りまで磨きやすくなります。

また、乳歯がグラグラしてきたら、食事のときにしっかり噛むことや、お子さま自身が舌で軽く触ることで、自然に抜けやすくなることもあります。

避けたいこと

揺れの少ない乳歯を、ご家庭で無理に引っ張って抜こうとするのは控えてください。根が途中で折れて歯ぐきの中に残ってしまったり、歯ぐきを傷つけてしまったりするおそれがあります。お子さまが歯医者さんを怖がるきっかけになってしまうこともあるため、抜けにくい乳歯は歯科医院にお任せいただくのが安心です。

よくある質問

永久歯が乳歯の横から生えてきたら、すぐに歯医者に行くべきですか?
乳歯がグラグラしていて痛みもなければ、数週間ほど様子を見ても問題ないことが多いです。乳歯がほとんど揺れていない、永久歯が大きく出てきている、1〜2か月たっても変化がないといった場合は受診をおすすめします。判断に迷うときは、早めにご相談ください。
内側から生えた永久歯は、乳歯を抜けば正しい位置に戻りますか?
下の前歯であれば、乳歯が抜けたあとに舌の力で前に押され、自然に正しい位置へ近づいていくことがよくあります。ただし、あごのスペースが足りない場合や、上の前歯で噛み合わせが逆になっている場合などは、自然には整いにくいため、矯正治療を検討することもあります。
乳歯の抜歯は痛いですか?
麻酔をしてから処置を行うため、抜歯中の痛みはおさえられます。根が溶けかけている乳歯であれば、処置自体も短時間で終わることが多いです。お子さまの不安が強い場合は、事前にご相談ください。
二枚歯は遺伝しますか?
あごの大きさや歯の大きさには遺伝的な傾向があるため、ごきょうだいで同じように二枚歯になるケースもあります。ただし、遺伝だけで決まるものではなく、乳歯の根の溶け方や生活習慣など、さまざまな要因が関係します。
大人になっても乳歯が残っているのは問題ですか?
永久歯がもともとない(先天性欠如)ために乳歯が残っているケースもあり、その乳歯がしっかり機能していれば、すぐに抜く必要がないこともあります。乳歯の根の状態や永久歯の有無はレントゲンで確認できますので、気になる方はご相談ください。

まとめ

永久歯が乳歯の横から生えてくる「二枚歯」は、特に6〜8歳ごろの下の前歯でよく見られる生え変わりのトラブルです。乳歯がグラグラしていれば自然に解決することも多い一方で、乳歯が抜けないまま時間がたつと、歯並びや噛み合わせに影響が残ることがあります。「様子を見ていいのか」「抜いたほうがいいのか」の判断は、レントゲンで乳歯の根と永久歯の位置を確認するのが確実です。

こころデンタルクリニックでは、小児歯科から矯正治療、口腔外科まで、お口まわりをトータルに診療しています。デジタルレントゲンや歯科用CTといった機器を活用し、歯の根やあごの骨の状態をしっかり把握したうえで診断を行います。治療の必要性やメリット・デメリットは専門用語をできるだけ使わずにご説明し、無理な治療は行いません。お子さまにも保護者の方にも納得していただけることを大切にしています。

大森駅周辺で、お子さまの歯の生え変わりや二枚歯についてご相談をお考えなら、大森駅東口から徒歩2分のこころデンタルクリニックにご相談ください。

この記事の監修者

こころデンタルクリニック 院長 渡邉 宣之(歯学博士)

経歴

  • 鶴見大学歯学部歯学科 卒業
  • 鶴見大学 臨床研修医
  • 鶴見大学大学院歯学研究科(口腔外科学教室所属)卒業 歯学博士号取得
  • 鶴見大学歯学部口腔外科学第二講座 研究員
  • 開業医勤務を経て、2008年6月 こころデンタルクリニック 開業
  • 2011年4月 医療法人社団 宣心会 開設

所属学会

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